「展示を見てもらえた気はするけれど、どの陳列がよかったのか分からない」。展示会の効果測定が難しいと感じるときは、ブース全体の成果とは別に、什器の前で起きた行動を記録してみましょう。
立ち止まる・商品に触れる・資料を受け取るという行動を分けると、見せ方のどこを改善するか考えやすくなります。この記事では、紙製什器を使った展示を例に、少人数でも始められる測定方法を紹介します。
以下の件数・時間・割合は説明用の仮定です。業界平均、必要サンプル数、商品の効果を示す実績ではありません。
卓上に商品サンプルをまとめて展示する場合は、設置場所に合う什器も確認しましょう。
1.測る対象を一つの陳列場所に絞る
何をもって反応とするか決める
結論:最初は商品群と観察範囲を固定します。ブース全体を見ながら複数の展示を同時に数えると、同じ行動の重複や見落としが増えやすくなります。
例えば、文具サンプルの卓上什器を対象にし、「什器の正面を通過した機会」「展示に体を向けて止まった機会」「商品を持ち上げた機会」を記録します。立ち止まりを3秒以上とするなら、全員がその基準で数えます。3秒は運用例で、一般的な基準ではありません。
実人数が分からなければ延べ件数と表示する
個人を識別せず観察する場合、再訪した人を完全には区別できません。そのため「来場者200人」ではなく「観察範囲の延べ通過200件」と記載します。同じ一回の立ち寄りで3商品を触った場合も、商品接触は1件とするなど数え方をそろえましょう。

2.立ち止まり率と商品接触率を計算する
分母を明記して比較する
同じ観察時間内で、延べ通過200件、立ち止まり40件、立ち止まった中で商品に触れた機会が18件だったと仮定します。
| 指標 | 計算 | 分かること |
|---|---|---|
| 立ち止まり率 | 40÷200×100=20% | 通過から足を止めた割合 |
| 立ち止まり後の商品接触率 | 18÷40×100=45% | 止まった後に商品を触った割合 |
| 通過からの商品接触率 | 18÷200×100=9% | 通過全体に対する接触の割合 |
45%と9%は同じ18件から計算していますが、意味が違います。報告書には「商品接触率」だけでなく、どの行動を分母にしたかまで記載してください。分母が0の場合は算出不可とします。
率の差はポイントと増加率を分ける
立ち止まり率が20%から25%になった場合、差は5ポイントです。元の20%に対する増加率は(25-20)÷20×100=25%になります。「5%増えた」とだけ書くと曖昧なので、どちらを表すか明確にしましょう。

3.資料の減少数を取得人数と混同しない
補充・回収・スタッフの使用分を記録する
結論:在庫の差から分かるのは、まず資料の部数です。1人が2部持ち帰ることもあるため、そのまま取得人数にはできません。
開始時50部+補充30部-終了時20部-スタッフ使用5部=55部なら、ほかの移動や廃棄がない前提で来場者向けに55部出た計算です。取得人数を知りたい場合は、手に取った機会を別に観察します。
欠品していた時間を残す
60分の観察中に資料が12分間なくなっていたら、資料を取れる状態だったのは48分です。取得数が少なくても、興味がなかったのか、資料がなかったのかでは改善内容が変わります。
欠品中の機会損失を、残りの時間の平均から実績として埋め合わせないでください。「取得55部・欠品12分」と並べて残し、次回の補充間隔を見直します。

商品展示と資料配布を分けたい場合は、設置場所や必要部数に合うカタログスタンドを確認しましょう。
4.配置変更の比較では条件をそろえる
一度に変える項目を一つにする
棚の位置、商品数、説明文、声かけを同時に変えると、どれが反応に影響したか判断できません。最初は「主力商品の置き場所」など一つに絞り、什器の設置位置、商品、担当者の案内をなるべくそろえます。
午前に配置A、午後に配置Bだけを試すと、時間帯の違いが混ざります。例えば30分ずつA→B→B→Aと交互に近い形で観察し、同じ配置の件数を合算する方法があります。30分や4枠は運用例で、統計的な十分さを保証しません。
| 配置の例 | 延べ通過 | 立ち止まり | 立ち止まり率 |
|---|---|---|---|
| A:主力商品を左側 | 200件 | 40件 | 20% |
| B:主力商品を中央 | 200件 | 50件 | 25% |
この例ではBが5ポイント高く見えます。ただし客層、混雑、隣接ブースの実演などでも変わるため、配置が原因と断定はできません。別の時間帯や会期でも再確認し、変更前後の写真と周辺状況を残しましょう。
5.QRコードは設置場所ごとに識別する
資料取得とサイト訪問を別の行動として見る
卓上什器とカタログスタンドに同じ案内ページのQRコードを置く場合、リンクの識別情報を変えると流入元を整理できます。Googleの公式資料では、URLにUTMパラメータを付けてキャンペーンを識別する方法が案内されています。
命名例は、utm_source=exhibition、utm_medium=qr、utm_campaign=autumn_2026とし、utm_contentをtable_displayとcatalog_standに分ける形です。これは自社で決める識別名の例で、特定の分類表示を保証するものではありません。実際のURLはWeb担当者と作成し、印刷前に読み取りと計測を確認します。
QR経由のセッション数は、カメラで読み取った回数や来場者の実人数と一致するとは限りません。同じ人の複数回アクセス、共有されたURL、計測されない訪問もあるため、立ち止まり件数と機械的につなげて成約率を出さないようにします。
6.次回に残す陳列と見直す陳列を決める
行動が途切れた場所から改善する
- 通過は多いが立ち止まらない:遠目で分かる商品分類や見出しを確認する。
- 止まるが触れない:手に取ってよいか、商品が取り出しやすいかを確認する。
- 触れるが資料を取らない:資料の位置や、持ち帰ることで分かる内容を見直す。
- 取得が途中で止まる:欠品、補充の遅れ、スタッフによる遮りを確認する。

記録表には、日時、配置、観察時間、延べ通過、立ち止まり、商品接触、資料取得、欠品時間、気づきを残します。観察できなかった時間はゼロではなく未観測とし、記録のある範囲で比較してください。
展示会の効果測定が難しい場合も、陳列の前で起きた行動なら改善の手がかりを集められます。受注への効果とは分けて検証し、次回に変える項目を一つ決めましょう。
展示する商品と設置スペースに合わせ、卓上・フロア・資料配布用の什器を検討できます。耐荷重や寸法は商品ごとに確認してください。

